今年は大切な人々が連れだって行ってしまった。皮肉にもこの冬の私の心は調子がよく、たましいは止水のごとくある。こわいのでしょう、その水を湛える器のそこに罅があることまた日々があることの途方のなさがとても。でも、罅は美しいものだから。空が割れてきたときの美しさは、誰しもが識っている。仲間が絶滅してしまった翼竜が、何万年の時を超えて空の裂け目に爪を掛けて、すこしずつすこしずつ生まれてくる。決して仲間に会うことのできない運命にありながら、それでも空にコツコツと罅を入れてゆく。曠野に立っている私はそれを眺めながら、「わたしが壊れませんように」と言う。そんな大晦日だ。