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シューベルト「冬の旅」
ヒュッシュ(Br)、ミュラー(p)
1933年録音、オーパス蔵(UK-HMV)

恋に破れ、共同体からも阻害されるよそ者の青年が、当てのない放浪の旅に出る、というちょっと重い感じの歌曲。

全部で24曲から成り、トータルで70分余りという、タイムだけで言えばベートーヴェンの第9なみだが、あのような高揚感はなく、重苦しさやある種の諦念に貫かれているような音楽だ。

しばしば安らぎや希望が顔を覗かせようとする部分もあるが、すぐに元の調子に戻っていく。

それだけ言われると、救いようのない暗い曲なのだが、実際に聴いてみるとメロディーラインなどはとても美しい。さすがはシューベルトだ。こんなテーマであっても今まで愛聴されてきたのは頷ける。

録音ではフィッシャー=ディースカウあたりが鉄板なのだが、機会があればぜひこのヒュッシュ盤も聴いてみて欲しい。
SPからの復刻だが音質は生々しい。ロマン主義の時代から新即物主義への移行期に為された珠玉の録音。

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