印刷会社という所に入社した時から頭の中は本の事しか無かった。最初の所属は商業印刷だったから、出版印刷に異動になった時はそりゃ嬉しかった。しかも大好きなMacintoshを使う技術部門だ。胸の高まりは最高潮だった。あれから30年、出版界の没落度は加速する一方。何とか一社員として出来ないもんかと調べまくって提案してみたが持続的イノベーションの壁は厚い。うちの会社がというよりは、業界全体が護送船団の持続的イノベーションであり、誰も必要としないのに修行している出版という山の寺だったのだ。鉄鼠の檻だったのだ。あそこには鉄格子も何も無いのに、今も多くの僧侶が誰も求めていない修行をしている。牛を追う、鼠の集団だ。所詮、漸修で悟入は難しい。私はこの3月で山を降りる。私の修行は終わったのだ。