先日ドラマをやってた有吉佐和子『悪女について』(新潮文庫)を読む。面白く、また、27人へのインタビューで構成されているため短編集のように小分けに読める感じが気楽でもあった。結局は一気に読んでしまったのだけど。各々の立場、性格、出会い方や公子との関係性によって公子への評価がまったく異なり、それは当たり前ではあるが、本人の大胆な行動ゆえ評価の振れ幅が大きくて面白い。インタビュイー同士でも互いの評価をしたり、みな結局は公子という強い引力のある人間に翻弄されている。その描き方が巧みだし、本人以外の語りで公子の形が浮き彫りになる造りも面白かった。戦後の混乱期から高度経済成長期に跨がる数十年の公子の軌跡。エネルギッシュで努力家、氏素性で行われる差別への反発と復讐心も感じたけれど、結局は愛と美を求めた人生だったのか。魅力的な主人公だった。
次男の話が核心をついてるのだと思うんだけど、それも私が彼女をそういう人だと思いたいだけなのかもしれん。って思わせる感じが巧いんだよな。