吉田千亜 著『孤塁』読了。ほとんど報道されなかった3.11直後の双葉郡消防士の活動をご本人たちからの直接の聞き取りをもとに著者が再構成したものだが、分刻みとも思える記述に当時の状況がリアルに伝わる。フクイチの危険な状況を知らされないまま懸命に人を救助しながら消火も行い、家族とも離れ離れのまま不眠不休で活動し、やっと家族と連絡がついて会いに行った先では放射能汚染された車や自分自身の身体に警戒され、忌避されるという消防士の過酷な現実。
私は埼玉で3.12から双葉郡からの避難者の方々の医療ケアに当たっていたが、現地に残った方々のことまで全く思い至らなかったので知らなかったことばかりだ。
「ヒーローになる必要はない」と、避難者の心を慮ってあえて目立とうとしなかった人たちの黙々とした活動があったこと。双葉郡に人が居なくなってからも期限切れのパンを繋がれた犬たちに食べさせて回っていた人たちがいたこと。知らせてもらって本当に良かったと思う。
自然災害と異なり原発事故は人災で、まだ終わるどころかこれからまだ悪化するであろう現地を思うと、そこに住んでいた人たちの心の傷は深く複雑だろう。

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こんな状況で原発再稼働などありえないと、深く心に刻み込まれる良書。
当事者である消防士さんたちの心を気遣いながらも細かく聞き取った著者の心労も相当なものだったろうと思う。ご尽力に感謝。多くの人に読んでもらいたい本です。

孤塁 双葉郡消防士たちの3・11 (岩波現代文庫 社会 333)

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