伯爵
『ジャッキー』はそれなりに好きで『スペンサー』は見てないけど倫理的に批判されるべきところがあると知っているくらいの距離感の監督。ピノチェトをテーマにして「コメディ」のジャンル分けされてる時点で嫌な予感はしていたけど、この『伯爵』を見て史実をいじって茶化すのだけが目的の人にしか思えなくなった。未だに「皮肉」を有効な手段だと信じている古い価値観の人らしい。
ピノチェトや周辺の家族に対してそんなこともしてたのか、とかサッチャーと関係あったのかとか知らなかったことを知れるという点はあるものの、『オオカミの家』が公開されている今このタイミングでこんな風にパッケージングされても面白いと思えるわけがない。そりゃピノチェトという存在をどう受け止めていくのかはチリの人たちの中でも様々ということは理解できるけど、この映画が良い出力方法だとも到底思えない。
会計士のアシスタントに扮した修道女が家族らに慇懃無礼な感じで質問していくところはちょっと面白くなりそうと思ったけどなんなんだあの終盤の展開。気色悪過ぎる。そう思わせるのが監督の狙いとか関係なくやり方も古臭いし映像的な新しさもまるでない。「笑うしかないくらい恐ろしい人だった」と言いたいんだろうがそのために色んな人を踏み過ぎ。