ウーマン・キング 無敵の女戦士たち
4K ドルビービジョン
Apple TV(iTunesでもある?)でレンタルした。自分らで字幕をつけてるのでめちゃくちゃになってることもしばしばあるAppleだけど今作は強調点(具体的には「ツェツェ」につくもの)のせいで変な改行になってること以外は問題ない字幕だった。
まあどう考えても劇場公開すべき映画でした。万が一この作品のテーマに全く興味がない人間が見に行ったとしても十分に響くであろうレベルで娯楽作として完成度が高かったので日本のソニーは色々と見誤ってる。
キャストの素晴らしさは言うまでもなく圧巻のヴィオラ・デイヴィス、そしてラシャーナ・リンチの表情筋操作力に感謝。あまり目立ってはなかったけどアゴジェの中に一際身体能力の高い人がいて誰だろうと調べたらエシ役のシャイナ・ウェストという人だった。予測変換にmartial artsって出てくるくらいバリバリアクションできる人みたいだから今後も見てみたい。
とにかくアクションが見応えあって、攻撃を受ける側の「手加減」を感じるようなショットがほぼ無い。アゴジェの強さを担保するためのアクションだから細部まで気が配られているのは当たり前なんだけど、それにしても素晴らしかった。
ドルビービジョンだったからかもしれないけど最近よくある「暗いシーンでアクションが見づらい」現象も起きてない。ゴアがどうこうとか言ってる人いたけど「痛み」を感じる描写はこれでもかと入ってるのでリアリティを損なっているってことは全くない。クライマックスのナニスカとオバの戦いとその決着の見せ方なんか本当に凄まじい。そういうのを売りにする映画を見過ぎて感覚変になってるんじゃないかな……。アクションじゃないけど士気を上げるためのダンスシーンも鬼気迫ってて良かった。改めて白人のリズム感に慣らされてるなとも感じた。
撮影に関しては往年の大作みたいな佇まいで、然るべき照明を当てられた役者の表情に、そしてロケーションの美しさに終始目が離せない。ただ個人的な好みとしてラストの取ってつけたような「壮大な景色での〆」は急に安っぽくなってしまった気がした。物語の大きさに見合ったラストカットが必要だと思ったのかもしれないけど、大きな話だったからこそ「一緒に踊らない?」っていうミクロなやりとりで〆た方がよりスマートだったと思う。ミッドクレジットに弔いのシーンを持ってくるのもなんとなくの意図は察せられるけど歯切れが悪く感じた。ナニスカがポジトになった後のどこかのシーンに入れれば意図は十分伝わると思うけどな。
当時のダホメで使われていた言葉が掛け声ぐらいで会話に一切用いられていないのは流石に不自然。中盤あたりの歌唱でも英語の合いの手を入れることで処理してたけど英語字幕を使いたくなかったのかな?習得が難しい言語だったのかもしれないけどもうちょっとだけ比率多かったらなー。「私たちの言葉が使えるの?」っていう展開もあるわけだし。あとあくまで人殺しの教育をしてるわけだから単なるスポ根ものに近いテンションで訓練が描かれるのもちょっと引っかかった。外部の人間のせいで戦争させられてるようなものだからもっと俯瞰して起きたこと全体を「悲劇」とする視点もあり得たと思うけど、そうはしなかったということか。
あと字幕でwoman kingがそのまま「女王」と訳されていて、いやそりゃそうなんだけどqueenではなくwoman kingであるニュアンスが死んでしまわない?例えば「女の王」とか、ただの「女王」ではないというニュアンスを伝える何かが欲しかった。