冬の日 ごごのこと(35mm)
監督 杉原せつ
あらすじだけなら5〜6歳の女の子がおつかいついでに散歩させてた犬が逃げ出しちゃってそれを追いかけるっていう話なんだけど、セリフが普通に録音されてなくて、映像と完全にはシンクロしてない上に脳内で響いているようなエコーがかかってて、時間を切り取ったというよりは誰かがこの風景を思い出していてそれを見させられているような感覚になる。音楽もやけに不気味で全然美化されてない思い出というか、大人にとっては些細なことでも子どもにとっては大きな不安を感じる出来事だということを表現している気がした。
そして映像のあまりの鮮明さに驚く。1964年の作品なのにめちゃくちゃフィルムの状態が良い。流石に若干のがたつきやチリはあって「昨日撮ったような」とは言えないまでも、カメラを激しく動かしているショットや水面だけを映すショットなどはデジタル撮影したものをフィルム風に加工したと言われても信じてしまいそう。この鮮明な映像が逆にグロテスクさを増すというか、嫌な記憶ほど忘れらない脳の構造を表しているようでなお不気味に感じられた。