「サイエンス・フィクションは、ぼくにとってマイノリティの声だ。その声を聴く者もまた、マイノリティだ。マイノリティの、マイノリティによる、マイノリティのた めの文学。そこにこそ、サイエンス・フィクションを読む悦びが生まれる。親の因果か、星のめぐりあわせか、ぬらりひょんのいたずらか、ぼくは、何をどうころんでも、多数派には属せぬからだ。多数派にまぎれこんだとわかったとたん、窮屈にな る。身動きがとれなくなる。息ができなくなる。もがき、あえいで、なんとかして水面から顔を出そうと試みる。
(略) サイエンス・フィクションも『スター・ウォーズ』この方、売上ではメジャーだが、本質的にはマイノリティの声である。サイエンス・フィクションは日常感覚が構築する世界ないし世間に異議を唱えるからだ。その世界ないし世間の「外」に場を設定するからだ。
サイエンス・フィクションのこの性格はサイエンスから生じている。サイエンスはわからないことをわかろうと活動する。サイエンスは未知と既知の境界の上で綱渡りをしている。その綱渡りにたずさわる人びとは未知を前にするとわくわくする。そういう人はマイノリティだ。」(大島豊)