大学生になってやっと本格的に海外小説を読むようになって、2年生になると中央線の書店や古書店にも足繁く通いはじめた。ひと恋しい性格のわりには、そんなときはだいたいひとり行動だったと思う。中野のタコシェにはもう消滅していたペヨトル工房の本のデッドストックがまだあって、近未来的な装幀に魅せられた。バロウズの『ノヴァ急報』も、バラードの『クラッシュ』(これは図書館で借りた本)もひと目でミルキィさんの装幀だとわかる。『クラッシュ』、92年に出た本に思えないようなデザインだよなあ、と当時の自分は感じて、そう感じたことをきょう、ちょうどいまも憶えている。
「アイデア」のような雑誌のブックデザイナーを特集する号を読むと、ミルキィさんの仕事がまとめて紹介されていて、この本もあの本もか、と発見がやってくる。近年購入した、山尾悠子さんを特集する「夜想」、エッセイ集『迷宮遊覧飛行』に至るまで手がけていることについては、なんだか幻想小説以上の不思議さを感じずにはいられない。(おわり)