昨日のイベントで引用されていたスライドの元の記事なんだけど、15歳児の体重や身長に対して遺伝が与える影響が90%以上って、感覚的に大きすぎると思うのだけど、何が変なんだろう。
音楽や数学もやたらと高いし、遺伝の影響が50%以下なのが殆ど無いのも気になる。ここで示している尺度自体がトリッキーということなのだろうか。
元の研究手法を見てみないと分からないけど。
https://dot.asahi.com/articles/-/128572?page=1
感覚的にというのは、日本人の(特定の年齢になった時点での)平均身長は戦後伸び続け、最近は伸び止まっているのだけど、これは、栄養状態の改善が大きいと言われていることから。遺伝が9割決めるなら、時系列でこんなに顕著に変わるのかなぁ?まぁ、平均が160cmから176cmに10%伸びたのが環境の影響で残りが90%という意味ならそうなのかもしれないけど、ここでいう環境以外の160cmはヒト集団内での遺伝的なバラツキというより、ヒト自体を特徴付ける部分が含まれているから、そういう解析では無いはず。
17歳の身長の標準偏差は、ザックリ、5cm位と言って良さそう。
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003224177
ということは、日本人の19歳の2/3は平均身長±5cmに入る。このバラツキは、個人ごとの食生活や運動量などの環境の違いによるものや、遺伝子で決まるものも含んでいる。一方で、1948年と2024年の比較では遺伝子の構成は大きく変化すると考えにくく、時代による食生活や運動量の変化を示していて、環境の影響のうち、集団全体の変化のみが反映されている。この変化もザックリ5cm位。
後者の5cmの変化が環境による影響の全てだと過小評価したとすると、身長において遺伝による影響が90%なら、遺伝子による身長の違いが50cmくらいあるということになりそうだけど、これは標準偏差5cmから考えれば5σになって、正規分布を仮定すると、100万人集めてきた時の最高身長と最低身長の差に相当する。
そう考えると、集団の遺伝的な均一性をどのように扱うのかとか、遺伝の影響と言ったときに、遺伝性の疾患をどのように扱うのかという問題があるけれど、一般的な感覚での遺伝の影響の大きさといったものとは大きく違う尺度を使っているような気がするねぇ。