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国語の授業で『山月記』をやった記憶がないんだけど牧野信一の『ゼーロン』は読んだ覚えがある、けど調べても高校生の国語の教科書に『ゼーロン』が掲載されてたことはないっぽい。馬が登場する小説で安岡章太郎の『サーカスの馬』とごっちゃになっているのか。内容は全然違うけど。でも国語の授業でもないと牧野信一の名前に触れる機会ってそうそうない気がするんだよな……。国語便覧で名前を知ったんだろうか。
なぜゼーロンにこだわってるかというとこの間シオドア・スタージョンの『ここに、そしてイーゼルに』という短編を読んで、これは現実と『狂えるオルランド』の世界をシームレスに行き来する技巧を凝らした小説なんですけど(あれ『ゼーロン』もこういう話じゃなかったっけ)と思って青空文庫で読み返したからです。全然違った。正直スタージョンの小説のほうは技巧も着想も素晴らしいんですけど主人公の男性に都合の良いドリームが展開されていて、ギャグみたいな感じで女性が殴られる描写もあるしで(わー全然好きじゃない)と思ってしまった……というかこの小説が掲載されている『時間のかかる彫刻』という短編集の、男女の機微が描かれた作品がもう全然自分の琴線に触れなくなっていてそれがショックだった。同短編集はSFより現代劇のがキレが良かくてそっちは好き。

『ゼーロン』から話がそれてしまったんですが読み返したらめちゃくちゃ面白くて、小田原の大地や森を悪漢が潜む中世の森に擬えて、主人公が昔は賢かったのに今は怠惰になってしまった馬ゼーロンに自分のブロンズ像を載せて処分するために運ぶ話で、とにかくゼーロンが全然歩かなくて主人公がイライラしてるのも面白いし、なんか見るたび「あああそこでトラブル起こして俺の命が危ない」って話ばっかりしてて、風景描写は美しいけどなんかぬるっと終わる。現代に蘇ったドン・キホーテとロシナンテの話みたいで、ちょっと危なっかしいようなユーモアがあって、逆にスタージョンはそれほどグッと来なかったが『ゼーロン』読めたからよかったなくらいに思っている。
しかし昔の人のあだ名が適当でなんかギリシャっぽいから「ギリシャ牧野」って呼ばれてたのほんと意味わかんなくていいな、私「イスタンブールじゃん子」とか呼ばれたいな(行ったことある海外がトルコだけ)

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