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『……それかれあって信子の収入に社会の関心はただならぬうえに、信子は四谷税務署の所得査定に抗議して再審査要求書を出したというニュースが昭和十二年七月四日の各社朝刊に一せいに出た。(中略)
「―-私は収入全部を正直に申告したんですのに税務署ではまだ隠してゐると思つてゐるんですわ、絶対に高すぎてよ。『良人の貞操』がいくら評判が良いからつて評判だけで良い加減に査定されちや堪まりません、女には選挙権も与へないくせに……」』
(田辺聖子『ゆめはるか吉屋信子 秋灯机の上の幾山河』 中巻より)

当時の吉屋信子は陸海軍大将の俸禄の何倍もの収入がある、と言われるほどの人気作家。その人にしてこの扱いで、最後の一言に胸を突かれる。
『ゆめはるか吉屋信子』を読むと、大正時代から女性に加えられる抑圧が現代とほとんど変わりなくて、その変化のなさに心底憤るのですが、それでも今の私たちには選挙権がある。
あるんですよ、選挙権が。



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