10月に読んだ本  読んだ順
1『わすれなぐさ』吉屋信子
2『何かが道をやってくる』レイ・ブラッドベリ
3『レーエンデ国物語 月と太陽』多崎礼
4『ジンセイハ、オンガクデアル』ブレイディみかこ
5『オンガクハ、セイジデアル』ブレイディみかこ
6『妖精・幽霊短編小説集 『ダブリナーズ』と異界の住人たち』J・ジョイス、イェイツ他
7『銀の糸あみもの店』瀬尾七重
8『飢渇の人』エドワード・ケアリー
9『夜のリフレーン』皆川博子 
読みっぱなしでメモすら残してないので、なるべく感想書いたりしたい。


吉屋信子『わすれなぐさ』、以前読んだ『花物語』の各篇に衝撃を受けた身としては、ありとあらゆる悲しい展開を予想しつつ読みましたが裏切られました。嬉しい。
しかし家父長制社会で生きる若い女性の苦しさの解像度が高くて、このように社会を描く人ならば、『花物語』の悲しい展開は容易く手折られまいとする矜持と抵抗にも思えてあれはあれでよかったなぁ、と思います。
30代半ばで書かれた『わすれなぐさ』のほうには、女の子たちが手を取り合って励ましあいつつこの社会を乗り越えて生きていけるんじゃないか、という希望があってすごく良い。

無口な主人公牧子が、真面目な硬派女学生一枝と仲良くなりたいと望むも軟派女学生の頭領陽子に阻まれてなかなか思い通りにいかず、陽子の魅力にも惹かれていってしまう、女学生の三角関係の物語。牧子は自分を蔑ろにする医者の父との関係に悩み、一枝は亡くなった軍人の父の呪縛に悩んでいる。登場する男性が、牧子の弟の亙君以外だいたいダメで、亙君も「強く在れ」という父の願望に振り回されて疲弊していきます。(牧子のお父さんの部下とか今もうようよいるタイプの気持ち悪い若者で、男性の気持ち悪さの描写上手すぎてちょっと笑っちゃった)。
つづきます

フォロー

とにかく軟派女学生の頭領、お洒落でコケティッシュでパワフルで素っ頓狂な陽子さんが、『花物語』にもいないしどんな物語にもいそうでいないタイプの人でものすごく可愛い……読み終わった後数日陽子さんの可愛さを噛み締めてた。
物凄く好き勝手にふるまうんだけど、物凄く一途に牧子のこと好きなの。牧子は陽子さんの誘惑でいろいろなことから逸脱してゆく自分に恐怖を覚えるのですが、今読むと可愛いもんです。むしろ後半牧子が自分を省みて、父と対話できるようになるのは陽子さんと過ごした時間のおかげと思える。
ただ陽子さん、後半は飛ばしすぎて「マッポを撒くわよホホホホホ」みたいな展開になって最高です。もうお願いだから陽子さん変わらないでって思いながら読んでたし、陽子さんが変わらずにいられる世界を作りたいって思った。

軟派女学生の会話も硬派女学生の行動も活き活きと描かれて、細部に渡ってものすごく楽しい。当時の挿絵は高畠華宵で、とても美しくすべて見たいのですが、岡田あーみんが漫画化しても岩舘真理子が漫画化してもどちらもしっくりくるようなパワーに溢れた作品です。とにかく大好き!

ログインして会話に参加
Fedibird

様々な目的に使える、日本の汎用マストドンサーバーです。安定した利用環境と、多数の独自機能を提供しています。