NEXT SOHEE あしたの少女 感想。
10月から上映されるところもあるので、ぜひ…と言いたいところですが、私は深く感動して心身がしばらくおかしくなったので、パワハラでつらい思いをした方等は体調とご相談の上でぜひ。個人的に体調を崩しても、見てよかった映画です。

ソヒを演じたキム・シウンも、彼女の死を捜査するうちに若い労働力を安価で搾取する社会構造に気づく刑事ユジンを演じたぺ・ドゥナも、素晴らしかった。
ぺ・ドゥナ、公権力の側から権力を糾弾する、理想が込められたキャラクターではあるのですが、それが不機嫌で不安定な中年の女性として描かれるのが本当に、本当に良いんです。寒空の下、黒いダウンとグレーのジーンズに身を包み眉を顰めて歩くぺ・ドゥナの不穏さ、なぜか『生きる』の伊藤雄之助を思い出しました。かっこよさの質が似ている、気がする。

ソヒがインターンの労働環境の中で追い詰められ、会いに行った友人のパワハラの現場を見てしまい背を向ける場面、友人たちも同じ被害を受けているため相談できない、家族は彼女を蔑ろにしているわけではないが、彼女にそれほど興味がなくて、という描写が上手くて苦しくて、決定的な場面で彼女を照らす光の不穏な美しさが本当に恐ろしい。

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この苦しさって、ソヒの苦しみの追体験でもあり、その苦しみを知りながら無視する周囲の人の感覚の追体験でもあるからだと思うのです。映画を見たあとしばらく動揺してしまい、私はただ運がよかっただけなのだ、と自分の過去を思い出したりして眠れない日が続きました。
ただソヒを照らした光が、後半でユジンを真逆の意味を持って照らし出すのは本当に救いに思えます。ユジンがソヒの友人たちを訪ね、「私に話をして」と伝える場面の暖かさ。
彼女は社会構造自体を変えることは(この映画の中では)できなかったけれど、それでも次のソヒを生み出さない、という決意と行動に、勇気づけられる思いがするのです。

あと最後に、これ搾取構造の中で抑圧されて亡くなった一学生が、気が強くてダンスが好きで、組織に合わせて自分を矯めることができなかった、ただひとりの「ソヒ」であったって刻み込むような映画でしょ、だから『次のソヒ』というタイトルは私にとっては『私は、ダニエル・ブレイク』と近しい意味を持つんですがなんでこんなぼんやりした希望でごまかすような邦題をつけるんだ。と思うのでNEXT SOHEEを最初につけます。

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