9月に読んだ本その1
キース・トムスン『海賊たちは黄金を目指す』東京創元社。
17世紀末、カリブ海を根城にスペインの植民地や商船を襲撃したバッカニアと呼ばれる海賊たちのノンフィクション。
当事者7人の日誌をもとに、1680年、2年にわたる冒険と略奪と闘いの日々を再構築した1冊で、めちゃくちゃに面白くて一気読みでした。
スペイン軍からパナマの先住民族の姫君奪還を皮切りに、徒歩での密林横断からカヌーによる川下り、襲撃と白兵戦を繰り返してやっと船団組んで海に出たと思ったら、凪の海で前進できず日照りと食糧不足と不潔な船内での病の蔓延に悩まされ…と、読んでるだけで体かゆくなりおなか痛くなる大変さなのですが、それでも海賊団には平等と友情と一攫千金のチャンスがあった、と。
日誌の書き手はのちに博物学で名を成すウィリアム・ダンビアや、3か国語を操り数学者でもあったバジル・リングローズなど、英国に留まっていたら貧困で立身が難しかった人々もおり、そういう人々が身を立てるためのみならず、どれほど過酷であっても海と自由に惹かれてしまう、という心情がわかるようなわからんような。
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海賊たちのモットーが「短いながらも愉快な人生」で、その命知らずの冒険野郎っぷりにちょっと笑ってしまったりしました。この本の一行の船長は20代の若さで200人近くを率いる有能な男性なのですが、とにかく無茶をする。1000人近いスペイン軍にわずか4人の見方を率いて立ち向かう場面は「ワイルドバンチのクライマックスの5倍やぞ!!」と驚愕し、その闘いの結末は、まあそうなるよね…。
あとスペイン艦隊から逃れるため、何か月にも渡って海上をさすらわなければならず、飲料水や食料はほぼ偶然発見した島頼りだから栄養不足・水不足で船員がどんどん倒れる。どんどん倒れるけど割と死なない(誰がしかの日誌に記述が残っている)、雨季のアマゾンのジャングルで泥まみれになり重傷を負い流される→なんだかんだあって助かるなど、人間、脆いのか案外頑丈なのかわからない、と思いました。
長い航海の間病気にかかった船員は地下のハンモックで寝かされ排泄物も垂れ流しで、どっかの島にたどり着いたらそこで船を斜めにして一気に掃除する、とか、特に衛生状態がどうなっていたかの描写が面白、と言っていいのか…過酷すぎて…。
なんだか時期的に『ワンピース』ドラマの副読本になるかな、と思ったけどならないと思った。でも本当に面白いです!
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