"杉咲:つねに軸としてあったのは、「一人でも多くの観客が居場所を感じられる作品であってほしい」ということでした。これまでの映像作品において多くの痛みを背負わされてきた歴史を持つ当事者がいるなかで、やっぱりその表象は変わっていかなければいけないという思いが私の根底にあって。
例えば、性的マイノリティの悲劇的な物語を見ながら涙してしまうとき、それは自分のジェンダーやセクシュアリティについて悩んだり、世間の偏見や差別に傷ついたり、生死を脅かされるような経験をしたことがない安全圏にたまたまいたということからきているのかもしれないと思うんです。私はそれを容易に感動と呼んではいけないと思っていて。当事者たちの境遇を“消費”してしまっているかもしれないという恐れを抱いています。"