8年前、こんな文を書いた。
「市場原理と民主主義が正しく機能するための前提は、メディアが機能していること。つまり情報の偏りがなく、設問が適切である場合だと考えられる」
今もこの文は正しいと考えているが、それとは違う切り口を考えている。
倫理的な正当性(道徳的事実)は「人間性」に密に関わる。事実も、倫理的な正当性も、多数決では決まらない。人が判断材料を吟味し正当なプロセスで思考することが欠かせない。
一方、数理モデルであるLLM(大規模言語モデル)に基づくAIは、いまのところ人間性も倫理もモデル化できず、つまり理解していない。他の数理モデルや、他のソフトウェアプロダクト(ブロックチェーンによる予測市場や、AIを応用した意見集約システムなど)も同様だ。
ソフトウェアや数理モデルやブロックチェーンをいじりまわした私たちは、一周回って「自分の理性と良心で"人間性"について誠実に考えないといけない」段階に来ているのではないだろうか。