共同通信は"ローマ教皇「白旗揚げる勇気を」 ウクライナに停戦交渉促す"という見出しでローマ教皇フランシスコの声を伝えた。
https://nordot.app/1139284164996333989?c=39550187727945729
降伏を意味する「白旗」という表現は、大勢の人々に困惑を引き起こした。調べてみると教皇フランシスコの発言には微妙なニュアンスがあり、「白旗」だけを切り取って判断することはフェアではないと思われる。
Pope Says Ukraine Should Have the ‘Courage of the White Flag’, New York Times, March 9, 2024
https://www.nytimes.com/2024/03/09/world/europe/pope-ukraine-white-flag.html
New York Timesはバチカンの応答を含め記事を出した。教皇フランシスコ発言の骨子は「強硬路線だけではなく平和を求めて停戦交渉をするべきであり、バチカンが仲介を務める可能性もある」ということ。
"インタビュアーはフランシスコに、ウクライナでは「降伏、この場合は白旗」が必要だと思うか、それともそのような降伏は強者の行動を正当化するだけだと思うかと尋ねた。"
(続く
"教皇フランシスコはこれに対し、侵略者を助長する恐れは「ひとつの解釈であることは事実だ」。しかし、最も強いのは、状況を見て、人々のことを考え、白旗を揚げる勇気を持ち、交渉に臨む者だと私は信じている」と答えた。"
"土曜日(3/9)の夜、バチカンのマッテオ・ブルーニ報道官は、ローマ法王が「降伏」ではなく「停戦と交渉」を意味していることを直ちに明らかにした。"
"フランシスコは「交渉は決して降伏ではない」とも指摘した。しかし、交渉のことを 「国を自殺に追い込まない勇気」とも呼んでいる。"
"バチカンのブルーニ報道官は土曜日、教皇は「公正で永続的な平和」のために外交的解決に達することを望んでいると付け加えた。"
感想:
「白旗」はまず取材者が使った言葉で、その同じ言葉を使って回答したという流れ。
ローマ教皇が戦争を支持せず平和を求めることは、宗教家として当然のことだ。
かといって、一部の親ロシア派が言うような一方的停戦(降伏)を求めるニュアンスでは決してない。ローマ教皇はロシアを支持するロシア正教トップを批判している。
とはいうものの、教皇の言葉は重い。発言のニュアンスをめぐり混乱があったことは否めない。
(続き)Vatican Newsの記事。ローマ教皇フランシスコの発言をバチカンの意図に忠実に伝えていると考えていいだろう。
https://www.vaticannews.va/en/pope/news/2024-03/pope-francis-swiss-tv-interview-gaza-ukraine-wars.html
いくつか発言を抜粋。
"戦争を起こすには2つの側が必要であると指摘し、ウクライナとガザでの戦争を終わらせるための交渉を奨励した。"
"教皇は毎日午後7時に、600人が避難しているガザの聖家族教区に電話をかける。"
"教皇フランシスコは、いかなる戦争においても、双方は常に和平交渉のテーブルに着くべきだと付け加えた。"
"教皇フランシスコはさらに、武器製造業者が戦争に及ぼす影響について考察した。"
「我々は自らを守らなければならない……それは事実だが、あなたは他国を爆撃するための飛行機を製造する工場があることに気づくだろう。それは我々を守るためではなく、破壊するためだ」
「戦争はどのように終わるのか? 死と破壊、そして親を失った子供たちだ」
教皇は、戦争を引き起こす地理的、歴史的状況は常に存在すると指摘し、戦争は「現実的な動機に基づいているように見える」と結論付けた。
「すべての戦争の背後に兵器産業がある。それはお金を意味する」
教皇フランシスコは「戦争は闇であり、闇の力である」と述べた。
感想:
軍産複合体を強く批判。
現代の戦争は、資金と兵器の供給なしには遂行できない。
ウクライナが米国を筆頭に西側諸国の援助で戦争を続けているように、ロシアは中国や北朝鮮や、おそらくはBRICS各国から物資や資金を調達して戦争を続行している。その背後には双方の戦争ビジネスがある。
ガザの虐殺も、イスラエルに兵器を供給する国(米国が筆頭)がなければ継続できない。
教皇フランシスコは、戦争ビジネスを「闇の力」と呼んで強く非難した形だ。日本も米国の戦争ビジネスに結びついているという点で、戦争の部外者ではない。