補足:
なお、カント哲学と人権のアイデアの関係については、哲学の専門家の間では議論が絶えない。大筋では、カント哲学で人権の思想を語ることには意味があることを多くの専門家が認めている。その一方、両者の関係について細部で批判しようと思えばいくらでもできる。
このあたりの議論は、以下の本に詳しい。
●レザ・モサイェビ:編,『カントと人権』, 法政大学出版局, 2022年
ひとついえることは、『カントと人権』で哲学のシンポジウムを開き本が出るほどには、カント哲学と人権のアイデアには深い関係がある。
哲学の専門家にとっては「違い」を意識した厳密な議論が重要であることは理解する。一方で、私は、「人々に共有される理念として分かりやすく役に立つ」という観点においては、細部を丸めた「通俗的理解」でまったく問題ないと思っている(純粋な数学と、工学で使う数学の違いのようなイメージ)。
なので私は「人権のアイデアを理解するにはカント倫理学が有用である」と堂々と言い続けます。