思うところあり、あれこれ調べ物をしています。読んでいる中の一冊がリン・ハント『人権を創造する』(岩波書店2011年)。著者はフランス革命史に詳しい歴史学者でジェンダー論者で女性。本書は「人権」という言葉の誕生と変遷を、政治と文化の歴史として追う。現代の人権概念の説明はやや物足りものの、歴史を振り返る手腕はさすが。
人権(droits de l'homme)の初出はルソー『社会契約論』(1762年)。ただしルソーは人権のアイデアには熱心でなく、自ら発展させることはしなかった。人権という用語は翌年1963年にはフランスで当たり前に使われるようになる。
影響が大きかったのは、1776年のトマス・ジェファソンのアメリカ独立宣言草稿、それを受けたと考えられる1789年のラファイエットのフランス人権宣言草稿。どちらも「あらゆる人間」の平等をうたう。
フランス革命の騒乱を受け、エドマンド・バークはフランス人権宣言を「インクのシミのついたくだらない紙くず」と揶揄。ベンサムは「生得の消滅しえない権利とは、修辞的に無意味で、無意味の上にも無意味だ」と非難。
(続く
@xc4187 今日(1月23日)作ったアカウントで1個のリプライしか投稿していないあなたは、どこのどなたですか?
そうしたモヤモヤはありますが、応答を試みましょう。
引用したリン・ハントの本から読み取れる重要な点は、人権の思想は、時代の精神と共に、多くの人々の思索を統合して完成されていったということです。その過程で文学作品が果たした役割も大きかったし、政治家や哲学者の影響もあった。人権は誰か1人の成果ではない点が非常に重要です。
そして18世紀の哲学者の思想が、現代の人権思想そのものではないことは当たり前です。大事なことは、18世紀の思想を現代において意味があるように「読む」ことでしょう。
例えばベンサムの言葉(例:自然権の否定)を全肯定することは現代では難しい。しかし、それはベンサムの功績を否定するものではない。ベンサムが考え出した功利主義は、ある意味で現代の社会の隅々まで影響を与えています。しかし、現代において「功利主義が唯一の道徳原理である」と主張しても、それは通用しないでしょう。
現代の応用倫理の教科書では、功利主義、義務論、徳倫理と複数の学説を教えます。一つの道徳原理だけでは医療倫理などの実際の応用の場で役に立たないからです。私もこの「複数の思想が必要」の立場に立ちます。