速報:サム・アルトマンがOpen AIのCEOを解任された。プレスリリースが出ている。
The Verge報道によれば、取締役会での不和に理由がある模様。
https://www.theverge.com/2023/11/17/23965982/openai-ceo-sam-altman-fired
AIブームのトップランナーであるOpen AIのお家騒動、その後。
Open AIのサム・アルトマンCEOが解任されて1日が経過した。クーデター派の旗色は悪い。主要投資家はクーデターを知らされておらず、アルトマン復帰に動いている。特にMicrosoftがアルトマン支持を明確にしたことは大きい。
投資からが圧力をかける作戦は、上級研究者による大規模な反乱、マイクロソフトからのクラウド・コンピューティングクレジットの保留、投資家からの訴訟の可能性など。これら圧力によりアルトマンが復帰した場合、クーデター派は逆に追放される可能性が高い。
ただし状況は流動的で、アルトマンや退任したOpen AI幹部らが新会社を設立する可能性もある。Microsoftはどちらに転んでもアルトマンを支援する構え。
情報戦の側面もあるだろうが、それにしてもクーデター派の旗色が悪すぎる。
Bloomberg(日本語)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-11-19/S4CGWWT0G1KW01
OpenAIお家騒動、その後。
事態は11月19日日曜の夜に急展開。取締役会は投資家らの圧力に従わなかった。前CEOのサム・アルトマンはOpenAIのCEOに復帰せず、元Twitch CEOのEmmett Shearが暫定CEOに就任する。
The Informationが最初に報じた。「決定が社内で発表された直後の午後9時過ぎ、サンフランシスコにあるOpenAI本社から、取り乱した社員たちが流れ出した」
https://www.theinformation.com/articles/breaking-sam-altman-will-not-return-as-ceo-of-openai
サム・アルトマン追放の主導的役割を果たしたのはAI研究者のIlya Sutskever(サツケバー)氏だ。対立の原因をめぐり業界筋はワイガヤ状態だが当事者らは多くを語らない。
New York Timesの記事は「サツケバーは、アルトマンがOpenAIのビジネス構築に集中するあまりAIの危険性に十分注意を払っていないと懸念していた」と書く。
https://www.nytimes.com/2023/11/20/technology/openai-altman-ceo-not-returning.html
OpenAIのガバナンスは特殊だ。通常のスタートアップ企業なら、多数派の投資家に逆らうことはありえない。だがOpenAIは非営利団体の役員会が営利企業を管理する珍しいガバナンス。役員会の決定を、投資家連合も覆せなかった。
その後、さらに急展開。
マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは20日、更迭されたOpenAIのサム・アルトマンとグレッグ・ブロックマンがマイクロソフトに加わり、新たな先進AI研究チームを率いることになったと発表した。
サティア・ナデラCEOのツイート
https://twitter.com/satyanadella/status/1726509045803336122
「マイクロソフトとOpenAIとのパートナーシップに引き続きコミットする」と記している。
OpenAIお家騒動の全体像。
非営利団体が運営するOpenAIは、ビジネスの加速よりAIの危険性への取り組みを優先したと思われる。
11月17日(金)、役員会がサム・アルトマンCEOを解任。グレッグ・ブロックマン社長も辞意を表明。役員でAI研究者イリヤ・サツケバー(Ilya Sutskever)が解任劇を主導。サツケバーは「AIの社会的危害を制限する」役割を担う役員。
The Informationの記事によれば、従業員にも「内紛の理由はAIの安全性」との認識があった模様だ。
https://www.theinformation.com/articles/before-openai-ousted-altman-employees-disagreed-over-ai-safety
アルトマン解任直後に開かれた全体集会で、社員からの「クーデターか」との質問に対し、サツケバーは「この言葉を選んだ理由は理解できるが、同意できない。これは、OpenAIが全人類に利益をもたらすAGI(汎用人工知能/超人工知能)を構築することを確認するという非営利団体の使命に対して、理事会がその義務を果たしたということだ」と述べた。
https://www.businessinsider.com/3-open-ai-researchers-resign-sam-altman-dismissal-ceo-2023-11
11月19日(日)、投資家らの圧力を受け、サム・アルトマン本人もOpenAI本社に入構し、役員会が行われた。結果、サム・アルトマンはCEO復帰はならなかった。
まだまだ続く、OpenAI劇場
770名のOpenAI従業員のうち500名以上が「サム・アルトマン復帰と役員会辞任がなければ、退職する」と署名して意思表示。 クーデター首謀者とみられていたイリヤ・サツケバー氏も署名。
https://www.wsj.com/tech/openai-employees-threaten-to-quit-unless-board-resigns-bbd5cc86
OpenAI劇場は続く。11/20月曜時点で、「アルトマンが復帰せずMicrosoftに入社」というニュースで決着かと思われたが、その後、「従業員の反乱」「サツケバーの後悔」が続き、状況はいまだ流動的だ。
この件を詳しく報道しているThe Informationの記事から(無料分だけだが)要点を抽出して並べてみた。
11/19の夜、「アルトマン復帰ならず」を聞いた数十人のOpenAIスタッフが会社を辞めると発表。
https://www.theinformation.com/articles/dozens-of-staffers-quit-openai-after-sutskever-says-altman-wont-return
11/20月曜日の朝、(クーデター首謀者と見られていた)イリヤ・サツケバー氏は「取締役会の行動に参加したことを深く後悔している」「会社を再結成するため全力を尽くす」とツイート。月曜日までに、OpenAIの700人以上のスタッフのほぼ全員が、アルトマンが復職しなければマイクロソフトに移籍するとする文書に署名。サツケバーも署名した。
https://www.theinformation.com/articles/microsoft-strikes-back-at-openai-hiring-altman-and-brockman
(続く
11/20、OpenAIに最初に投資した1人、ビノット・コースラ(シリコンバレーの伝説的ベンチャーキャピタリスト)はThe Informationに寄稿し、OpenAI役員会を批判。
「OpenAIの役員たちが信仰していた効果的利他主義(effective altruism)とその誤用は、人工知能がもたらす多大な恩恵への道のりを後退させることになりかねない。すべての人に無料の医者が、地球上のすべての子供には無料に近い家庭教師が与えられることを想像してみてほしい。それこそが、AIの約束に賭けられているものなのだ」
https://www.theinformation.com/articles/openais-board-set-back-the-promise-of-artificial-intelligence
OpenAIの顧客は、競合のAnthropic、Microsoft、Googleへの離反を検討。この週末、100以上のOpenAIの顧客がAnthropicにコンタクトした。
https://www.theinformation.com/articles/openais-customers-consider-defecting-to-anthropic-google-cohere
元GitHub CEOのFriedman氏、Scale AI創業者のWang氏がOpenAI CEOのオファーを断っていた。
https://www.theinformation.com/articles/former-github-chief-nat-friedman-declined-openai-interim-ceo-role
(続く
速報:OpenAI公式によれば、サム・アルトマンがCEOとして復帰する。
https://twitter.com/OpenAI/status/1727206187077370115
OpenAI内紛はアルトマンのCEO復帰で決着し、各メディアが競って記事を書いている。その中から興味深い情報を紹介する。
アルトマンはOpenAIのCEOに復帰するが、妥協もした。1番目に、アルトマンは新役員会に参加しない。一緒に辞任した前社長ブロックマンも役員にはならない。2番目に、独立したチームがアルトマンを調査する(The Information報道による)。3番目に、アルトマンを解任した旧役員会から1名、Adam D'Angeloが引き続き新役員会に参加する。
アルトマン解任につながった役員会の不和やアルトマンの疑惑は完全には解消されておらず、旧役員会メンバーも新役員会に影響力を持つ形となった。
新役員会は3名。議長にセールスフォースの元共同CEOであるブレット・テイラー(Bret Taylor)氏。そして元財務長官ラリー・サマーズ(Larry Summers)氏。旧役員会からQuoraのCEO、Adam D'Angeloが参加する。
The Vergeの記事によれば、新役員会の当面の仕事は、最大9人の拡大役員会を任命することだ。大口投資家のMicrosoftは役員会の議席を求めている。
以下、いくつかの記事から。
New York Times 11/21付け。旧役員会の模様を伝えている。
https://www.nytimes.com/2023/11/21/technology/openai-altman-board-fight.html
アルトマン更迭までの1年ほど、OpenAI役員会は揉めていた。
(約2年前のこと)3人の上級リサーチャーがアルトマン解任を求めたが失敗。彼らは退社して競合会社Anthropicを設立した。
旧役員会の1人、イリヤ・サツケバーはこの時期からアルトマンに不満を抱いていた。
今回のアルトマン更迭のトリガーとなったのは、旧役員会の一人ヘレン・トナー(ジョージタウン大学安全保障・新技術センターの戦略ディレクター)が共同執筆した論文だ。「AI開発企業が発信する社会的シグナルとしてのコスト」に関わる論文だが、アルトマンは論文が「ライバルのAnthropicを賞賛し、OpenAIを批判している」ように受け取り、ヘレンを解任しようと役員会で話し合った。その直後、サツケバーはアルトマンを更迭した。
だが11/19日曜日に、アルトマンと一緒に辞任した旧役員Brockman氏の妻から説得され、サツケバーはアルトマン側に付いた。(The Vergeの記事によれば、サツケバーは、Brockman夫妻の結婚式の司会を務めて
いた)
(続く
今回の内紛の発端となった論文は、下記リンクで読める。
Decoding Intentions -- Artificial Intelligence and Costly Signals
https://cset.georgetown.edu/publication/decoding-intentions/
感想:これでトナーの解任を言い出すとは、アルトマンも虫の居所が悪かったのではないか。その様子を見て、サツケバーは一回はアルトマンを見限ったのだろう。
The Information 11/21付け記事。アルトマンはOpenAI復帰後の内部調査に同意したことを伝えている。
https://www.theinformation.com/articles/breaking-sam-altman-to-return-as-openai-ceo
The Verge 11/22付け記事。アルトマン復帰の概要と、アルトマン側の妥協の内容を伝える。
https://www.theverge.com/2023/11/22/23967223/sam-altman-returns-ceo-open-ai
「情報の信頼性は不明」という注釈付きで。
「OpenAIの元従業員」を名乗る匿名の人物が、サム・アルトマンの調査を求めたオープンレターが出回っている。
OpenAIの組織変更(非営利団体から営利企業への移行)の時期に多くの従業員が退職を迫られ、その背景には不正や悪い企業文化があった疑いがあるとしている。
レターは以下の3点を求めている。
- OpenAIが非営利団体から営利団体に移行し始めた2018年8月以降のサム・アルトマンの行動を調査する。
- この期間に退職、休職、解雇されたOpenAIの元従業員から、個人的な供述を求める公募を行う。
- 報復やその他の被害を受けないよう、名乗り出た人の身元を保護する。
https://web.archive.org/web/20231121225252/https://gist.github.com/Xe/32d7bc436e401f3323ae77e7e242f858
解説:
以前の役員会がアルトマンを解任した理由は、詳細が不明だ。
内部情報から「AIの安全性」をめぐる意見の相違との報道が出た。しかし役員会が暫定CEOに選んだEmmett Shearは、「安全性ではない別の理由だ」と述べた。
投資家は「役員会の効果的利他主義(Effective Altruism)と、創業者の企業家精神の衝突」と説明。
今後より詳細な情報が出てくる可能性はある。今は判断保留が賢明か。