2011年の福島第1原発事故の後の放射能に関する風評言説は社会不安を招いた。風評被害は「放射線による被害よりも有害だった」との見方もある。私も、ある程度はその側面があったと思います。当時の原発事故被害に関する言説には、科学的でなく、倫理的に怪しい言説が多かった。
2023年の今は、まったく事情が異なります。
ALPS処理水放出にあたり、政府、メディア、ネット世論は「安全性はIAEAが保証しており、危険性をとなえる意見は非科学的で風評加害」とのトーンです。ALPS処理水の安全性は科学者の間でも議論があり、「絶対に安全」と断言することは科学的な態度ではありません。
IAEAは放出の正当性の判断を日本政府に委ねています。そして日本政府が、地域の漁協や太平洋諸国の合意を取らずALPS処理水の放出を進めたことは正当性を欠き倫理に反します。
今からでも放出を中止し、より環境インパクトが少ないベターな選択肢を探るべきです。