落合恵美子(1989)『近代家族とフェミニズム』[初版]勁草書房

「バダンテールに対するルークスらの反論のように、これ以前の時代にも他の時代でも、母親を含めた大人はしばしば子どもを可愛いと感じ、それなりに大切に世話をしたのではあったが、『母性愛』をこれほどまでに至上の感情として神秘化し、すべての女性に『本能』として強制するようになったのは、やはりこの時代以降だと言ってよかろう。『母』とは異なったかたちではあるが、今日的な『父』もまたこの頃誕生した。一家に対する支配を半ば公的な責務としていた『家父長』に替わって、ときには溺愛に陥りそうな感情をみずから抑制しなくてはならないほどの情緒的な『父』が登場する。『父』は鞭による教育を廃し、かわりに『母』と共に子どもの内面にまで目を届かせる精神的な統御を開始した」6-7頁

「ロマンチック・ラブは中世の宮廷恋愛にひとつの起源をもつと言われるが、騎士が愛を捧げる貴婦人と、性関係をもつ妻とは、全く別の存在であった。ビクトリア朝まで時代が下がっても夫婦間の疎遠は相変わらず、夫婦はむしろ各々の同性の友人との間に友愛の情を育んでいた」8頁

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「近代における性の最大の特徴は、生殖との分離であると言われる。…
 しかしこの文脈でそれ以上に強調されねばならないのは、一見正反対のように見えるが、性の生殖への従属ではなかろうか。…
 性を生殖の道具とみなす心性」9頁

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