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読書備忘録『馬鹿たちの学校』 

*河出書房新社(2010)
*サーシャ・ソコロフ(著)
*東海晃久(訳)
読み始めるなり「内容を説明するのが難しい小説」カテゴリに追加したいと思った。おおまかな仕組みを解釈すると、本作品は特殊学校に通っている人物の独白だ。主人公は知的障害と精神疾患を抱えているようで、二人の人格を持ち、存在しない人間を認識する。物語は異なる人格の対話を交えながら、両親の話、教師の話、将来の夢の話などを綴っていく。でも主人公の話は信頼に値するのだろうか。発音を間違えたり、別人格の意見を参考にしたり、登場人物の名前も年齢も変容する語りを信じられるのか。小説の読み方が自由なのはいうまでもない。それでも『馬鹿たちの学校』に関しては「信頼できない語り手」の、荒唐無稽な、断片的な空想の堆積物である点を踏まえるよう推奨してもバチはあたらないと思う。本作品のテクストは表現するための道具というより、テクスト自体表現対象としている節があるので、読み方次第では混乱したまま結末を迎えることになり兼ねない。同時にこの飛躍をかさねる語り口に馴染めたら爽快だ。その暴れ馬を手懐けたような達成感はたまらない。

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