フォロー

読書備忘録『フランス怪談集』 

*河出文庫(2020)
*ジェラール・ド・ネルヴァル 他(著)
*日影丈吉 他(訳)
巻頭からネルヴァル、ゴーティエ、メリメと名だたるフランス文学者を紹介する贅沢なアンソロジー。一二編の収録作も充実している。怪奇幻想と恋愛要素を組み合わせた禍々しくも浪漫のある物語から、憑依や幽体離脱を連想させる精神の暗黒面を表現した物語まで、恐怖の中に気品を備えた近代フランス文学の味に浸ることができる。例をあげるなら、僧侶の立場でありながら死霊と相思相愛になり死の淵に立たされる『死霊の恋』、不気味なヴィーナス像を保管する富豪家の騒動を描きだした『イールのヴィーナス』は前者の怪奇的な恋愛小説に分類できる。また、ある人物が見世物小屋の曲芸師を事故に遭わせようと画策する『ある精神異常者』、真面目な超能力者が自身の能力に溺れていく『壁をぬける男』、博物館の蝋人形に魅了された男が奇妙な体験をする『代書人』は後者に入る。河出書房新社からは各国の怪談集が刊行されているが、本書はフランス文学とロマンスを結び付ける選定が特色で、イギリスともドイツとも異なるロマンティシズムを香らせている。

ログインして会話に参加
Fedibird

様々な目的に使える、日本の汎用マストドンサーバーです。安定した利用環境と、多数の独自機能を提供しています。