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読書備忘録『辺境の聖女と拷問人の息子』 

*インゲン書房(2020)
*松代守広(著)
noteで連載中『拷問人の息子』の続編が登場。黄印の兄弟団が支配する国家「帝国」が舞台であり、クトゥルフ神話という骨子にマカロニウエスタンで肉付けした新感覚の小説世界が蘇る。高度な能力者「辺境の聖女」を崇拝する集団に紛れ込んでいる元将校を処罰するため、不老難死の奇跡術者「非神子」である機械化異端審問官メルガールは、管区の筆頭拷問人を務めるエル・イーホをともない、鋸歯魚の庭と呼ばれる辺境の地に向かう。狡猾な元将校。また、メルガールとおなじ「非神子」である「辺境の聖女」が見せる陰。崇拝者たちの異様な様相。無機的な情景表現と能動的な情緒表現の巧妙なバランスから生まれる切迫感に、読者(私)は息苦しくなるほどの緊張を覚える。この緊迫はハードボイルド小説の醍醐味ではないだろうか。これもマカロニウエスタンの武器であるなら実に魅力的な技法といえる。そのマカロニウエスタンの定義は後書きで詳述されているので、気になる人には読んでいただきたい。作品の解説であるとともに、歴史と技法をまな板に載せたコラムとして享受できる達文だ。

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