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読書備忘録『幻獣辞典』 

*河出文庫(2015)
*ホルヘ・ルイス・ボルヘス(編著)
*柳瀬尚紀(訳)
子供の頃から動物図鑑を開くと不思議な喜びを覚えた。掲載されている写真や絵を眺め、説明文を読むとその動物が頭の中で自由奔放に動き始める。そうした想像に耽るのは楽しい。実在する動物だけではなく、架空の生物にも好奇心を刺激されるもので、世界各国の神話・伝説に登場する幻想的な存在、日本の妖怪、ロールプレイング・ゲームのモンスター。興味の対象をあげると切りがない。東西南北の奇妙な存在を辞典におさめ、空想の世界を紹介していくホルヘ・ルイス・ボルヘスは、未知なる存在に惹かれる読者の好奇心に応える幻想の案内人といえる。彼の解説はサラマンドラやバハムートなど見聞きしたことのある幻獣に新鮮味を与え、プリニウスやプルタルコスやパラケルススといった知の巨人たちをリスペクトするように書棚を飾っていく。そうして読者はボルヘス流の図書館が築きあげられる過程に接し、気が付けば完成した図書館を彷徨することになる。この知的冒険を体験させてくれる『幻獣辞典』は、アルゼンチンの書痴ボルヘスの図書館を閲覧できるおいしい書物だ。

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