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読書備忘録『われら』 

*エヴゲーニイ・ザミャーチン(著)
*松下隆志(訳)
近現代ディストピア小説の先駆的作品。宇宙船の建造技師Д-503の日記という体裁で、癖のある文体と断章形式で展開する。舞台は約一〇〇〇年後。絶対的支配者である「恩人」の統治下で、人民は「単一国」という緑の壁に覆われた管理社会で生活していた。プライバシーは存在しない。名前は番号に替わり、住居はガラス製の集合住宅。日常の言動は監視・盗聴対象で、性行為も予約制で当局にピンク・クーポンを申請する必要がある。けれども管理社会下で教育を受けてきた人々は統制に不満を覚えることはなく、Д-503を始め現体制を賞賛し、統治以前の社会を下等なものと見くだしている。すでに「恩人」による支配は、人間の思考まで行き届いている。その中、古代の文化を尊ぶI-330が宇宙船インテグラルの建造技師であるД-503を誘惑し、国家転覆を企てるのであった。エヴゲーニイ・ザミャーチンが『われら』の執筆を開始したのは一九二〇年。もっとも全体主義を風刺する内容故ソ連で発表できず、一九二七年チェコにて出版。ロシアで出版されたのは一九八八年だった。

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