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読書備忘録『100人の作家で知る ラテンアメリカ文学ガイドブック』 

*勉誠出版(2020)
*寺尾隆吉(著)
一九世紀から二一世紀までのラテンアメリカ文学者を一〇〇人に厳選し、逆編年体形式で概説する文学事典。すでに邦訳されている本に限らず、未邦訳の本も積極的に紹介している点が特徴で、今後の翻訳事業を見据えた大がかりな構成になっている。また、作家の経歴に加えてスペイン語圏の主要な新聞雑誌、出版社、文学賞なども列挙しているのでラテンアメリカ文学愛好者にとっては垂涎の一冊である。寺尾隆吉氏の忖度しないフリーダムな論評には頷けないこともあるが、頷けることばかりが良書の条件ではないし、そもそも本書は異論の噴出を想定して書かれているのだ。前書きで「安易な賞賛を避ける」「辛辣な論評も辞さない」ことを明言し、さらなる議論の展開に期待を寄せているところからもわかる通り、ラテンアメリカ文学研究の進展をテーマにしている。この点には留意しておきたい。それに愛読者としても裏表のない論評は新発見に繋がり、理解を深める契機にもなる。

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