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読書備忘録『チボの狂宴』 

*作品社
*マリオ・バルガス=リョサ(著)
*八重樫克彦(訳)
 八重樫由貴子(訳)
祖国の恩人あるいは国家再建の父と謳われて、三一年間強権統治を継続した末側近の将軍たちに暗殺されたドミニカ共和国の政治家ラファエル・トゥルヒーリョ。冷酷非情な弾圧、徹底した個人崇拝の強要で世界的独裁者として恐れられた「チボ」の時代を描きだした『チボの狂宴』は、マリオ・バルガス=リョサ氏の最高傑作にあげる声も多いラテンアメリカ文学の金字塔である。物語は複数の語りで構成されている。脳溢血で倒れている元上院議員カブラルの娘ウラニアによる回想、独裁政権時におけるトゥルヒーリョの凶行、暗殺計画を立てる反体制派テロリストたちの行動。異なる時間・異なる視点が交わりながら恐怖の歴史は形成されていく。こうした時間・視点・虚実の交錯はバルガス=リョサ氏の得意技なので、愛読者の方々にはなじみのある手法だと思う。カブラルという架空の上院議員を混ぜてトゥルヒーリョ政権を再構築し、ウラニアの語りに委ねることで生まれる虚実のバランスが素晴らしい。

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