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読書備忘録『出家とその弟子』 

*新潮文庫(1949)
*倉田百三(著)
浄土真宗の開祖親鸞は幾度も文芸作品で扱われてきた。信仰と愛欲の狭間におかれた若者の苦悩を始め、人間がおちいる罪業と信仰の衝突を描いた本作品はその火付け役となった。素地は親鸞の教えをまとめた『歎異抄』で、主要となる登場人物は親鸞、弟子の唯円、息子の善鸞、遊女のかえで。悩める「人間」と「顔蔽いせる者」が問答を繰り広げる序曲に始まり、幼少期の唯円と親鸞の出会い、唯円と遊女かえでの恋路、勘当された善鸞の煩悶が描かれていく。また本作品は浄土真宗の教義を基礎としながらもキリスト教の概念を交えるなど、別の教義や表現を折衷している点が特徴で、本来の親鸞像とは相容れない台詞がちらほら見受けられる。そのため発表当時は文学界と仏教界から批判を寄せられた。けれども『出家とその弟子』の執筆動機はあくまで芸術的衝動であり、教義を伝えるためでも布教するためでもなかった。いってしまえば親鸞にインスパイアされて戯曲化したフィクションなのだ。ロマン・ロランは本作品における宗教の調和を激賞し、フランス語版の序文まで書いたという。私はこの見方を推奨したい。

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