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読書備忘録『日本近代文学入門』 

*中公新書(2019)
*堀啓子(著)
三遊亭圓朝は師匠の無理難題を交わしながら『怪談牡丹燈籠』を作り、二葉亭四迷は圓朝の創作落語とロシア語に着想を得て『浮雲』を著した。二人の苦心惨憺は口語をそのまま文章化する言文一致体の誕生に結び付いた。現代の文法に繋がる画期的な文体は、圓朝と四迷という近代落語と近代小説の先駆者たちの連携によって生まれたのである。このように本書は明治大正期という日本文学史の過渡期に重きを置き、日本近代文学を形成してきた重要人物をとりあげていく。近代初の女性職業作家として活動した樋口一葉。文学結社「硯友社」を結成した尾崎紅葉。理想の創作を新聞小説に求めた夏目漱石。反自然主義作家として日本流自然主義に背を向けてきた森鷗外。機知に富む短編小説を次々発表するも「ぼんやりした不安」を理由に自殺した芥川龍之介。錚々たる顔触れである。小説家だけではなく、落語家やジャーナリストのエピソードも交えて明治大正期の文学界を概説しているので、当時の文豪たちの交流を詳細にうかがい知ることができる。表題通り入門前に読んでおきたい良書である。

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