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読書備忘録『グアテマラ伝説集』 

*岩波文庫(2009)
*M.A.アストゥリアス(著)
*牛島信明(訳)
ラテンアメリカ文学ばかりで申しわけないが、今回もグアテマラよりアストゥリアス『グアテマラ伝説集』をとりあげる。幼少期に聞かされた民間伝承と、青年期にソルボンヌで翻訳したマヤ文明の資料を源泉とするアストゥリアスの代表作だ。序章にあたる「グアテマラ」「「金の皮膚」の回想」、「火山」「長角獣」「刺青女」「大帽子の男」「花咲く地の財宝」等の寓話郡、人間にして川であるフワン・ポジェを主役とする神話風の物語「春嵐の妖術師たち」、インディオの太陽たる守護霊長ケッツアルことククルカンと、太陽の火の鳥たるグワカマーヨの伝説を劇形式で展開する「ククルカン 羽毛に覆われた蛇」の全九編。プロローグ部分は随筆のような筆致で、後続の作品群は神話的な文体で記述されており、最後は戯曲で締め括られる。随時語り口を変えるスタイルは書物に躍動感を与え、織り込まれた伝説は古来より語り継がれてきた口承文芸の趣を呈していく。まるで後世に編まれたアンソロジーのような構造であり、アストゥリアスの高度な技術を垣間見ることができる。

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