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読書備忘録『ピュリティ』 

*早川書房(2019)
*ジョナサン・フランゼン(著)
*岩瀬徳子(訳)
ジョナサン・フランゼンという現代アメリカ文学界の怪物が送りだした通算五作目の長編小説。家族間の人間関係で生まれるストレスを追究すると如何なる物語ができるのか。正解はないだろう。しかし、ピュリティ(純粋)と名付けられた娘を通し、とどまることなく流動する時代と、受け継がれる家族間の葛藤を緻密なプロットに組み込むことに成功した『ピュリティ』はまぎれもなく一つの回答である。奨学金ローンによる経済的困窮にあえぎながら、社会活動家たちとシャアハウスで暮らしているピップことピュリティ・タイラー。彼女はまさしくストレス社会に生きていた。母親は隠遁者さながら浮世離れした日常を送っており、父親は行方不明で名前も知らされていない。母親も父親に関して何も教えようとはしない。募るものは哀しみと焦りと苛立ちばかりである。ところが彼女は期せずしてリーク情報公開組織サンライズ・プロジェクトの主催者アンドレアス・ヴォルフの招きでインターンとして務めることになり、組織の関係者を始め、複雑怪奇な人間模様に踏み込んでいく。

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