フォロー

読書備忘録『物語は人生を救うのか』 

*ちくまプリマー新書(2019)
*千野帽子(著)
人間とは意味付けをかさねることで事象を把握する生きものである。意味付けする行為とは因果関係を作ることであり、ときには辻褄を合わせるため存在しない事物を生むこともある。人は日常的に物語を構築している。千野帽子氏は前著『人はなぜ物語を求めるのか』で、こうした物語化の構造を噛み砕いて解説した。今回の『物語は人生を救うのか』は前著で書けなかったテーマをとりあげているので、続編よりはA面に対するB面に近い。このB面では前回同様物語論を基礎としながら、虚構表象(フィクション)と非虚構表象(ノンフィクション)、偶然性と必然性の具体的な相違点に触れるとともに、自分あるいは他者にもたらされる物語化の影響を解釈していく。物語化とは個人だけの問題だけではなく、社会に根付いている一般論もまた物語化された概念であり、往々にして明確な根拠に欠けたまま人の行動に干渉する。文中ではこの一般論を個別の理解をささえる図式・世界観・人間観とした上で、如何なる影響を及ぼすのか具体例を交えて説明する。物語とは良くも悪くも身近にあるものなのだ。

ログインして会話に参加
Fedibird

様々な目的に使える、日本の汎用マストドンサーバーです。安定した利用環境と、多数の独自機能を提供しています。