フォロー

読書備忘録『ダイヤモンド広場』 

*岩波文庫(2019)
*マルセー・ルドゥレダ(著)
*田澤耕(訳)
 カタルーニャ文学を象徴する恋愛小説であり、生前のガブリエル・ガルシア=マルケスもスペイン語翻訳版と原文カタルーニャ語版を読み込み、惜しみない賞賛の言葉を送った。おおまかな筋はクルメタことナタリアの半生に迫るものである。野生児のまま大人に成長したようなキメットとの結婚。命がけの出産。家中を飛びまわる鳩たちの飼育。家庭を切り盛りする中でナタリアはキメットはわがままな言動に悩まされ、次第に神経を弱らせていく。そして内戦の勃発により彼女はさらなる苦境に立たされてしまう。終わりの見えない武力衝突に怯え、失望と憧憬の念を抱えながらも生きる道を模索するすがたには胸を締め付けられる。また、本作品はカタルーニャ語で書かれている点も重要である。ロマンス諸語であるカタルーニャ語にはフランコ政権時に排斥されてきた歴史的背景があり、解説によればカタルーニャ語の潜在的読者は六〇〇万人程度。それでも文学を通して母語を語り続ける作家は存在する。今は亡きマルセー・ルドゥレダもその一人だった。

ログインして会話に参加
Fedibird

様々な目的に使える、日本の汎用マストドンサーバーです。安定した利用環境と、多数の独自機能を提供しています。