小林エリカ『彼女たちの戦争 嵐の中のささやきよ!』

マリ・キュリー、湯浅年子、ミレヴァ・マリッチ、カミーユ・クローデル、リーゼ・マイトナー、ヴァージニア・ウルフら、「彼女たち」の生と死に耳を澄ませる著者の真摯さに、私がかの人たちのことを「知り直した」時の沸々とした感情も蘇ってきて、ものすごく揺さぶられました。

個人だけではなく、工場で被曝し放射性障害になった「ラジウム・ガールズ」、ボコ・ハラムに誘拐され解放後に再び「学校へ通う少女たち」、学徒動員された女学生ら「風船爆弾をつくった少女たち」、旧日本軍慰安婦被害者たちとともに日本大使館前に集う「水曜日にその傍らに立ち続ける女たち」など、戦争と無関係には生きられなかった人々の声を聞き逃すまいとする著者の率直な胸の内が迫ってくる。

「偉人」のすぐ側で功績も存在も顧みられず忘れられていった女性たちが心に住んでいるのが自分だけではないことが嬉しかった。
アインシュタインがリーゼ・マイトナーを「我らがマリ・キュリー」と呼んだのは賛辞なのだとしても、私も著者と同じく何度でも繰り返したい。「我らがリーゼ・マイトナー!我らがリーゼ・マイトナー!」

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世界の様々な女性たちについて書いたエッセイ集は、はらだ有彩『「烈女」の一生』もとても良かったです。

トーべ・ヤンソン、崔承喜、フリーダ・カーロ、吉屋信子、ワンガリ・マータイ、プーラン・デーヴィーなど、抑圧とスティグマと共に生きた20人の人生を綴った一冊。

実を言うと本を開いた時は、他者が眼差した解釈と言葉で誰かの人生が立ち上らされることへの居心地の悪さのようなものを少し感じていたのだけど、そんな葛藤などはすでに著者は考え抜いており、この本は「彼女たちが残した感情の痕跡に、自分の感情を託す本」でした。
「烈女」たち各人ごとに要となる視点があり、その要とフレーズを反復させながらどんどん膨らんでゆく語りが素晴らしかった。

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