佐々涼子『夜明けを待つ』
技能実習生が送り出し機関で学ぶ日本語学習は、スタンダードな「です・ます形」ではなく、現場で働くにあたり真っ先に必要な日本語の「どけ!」「やめろ」などの「命令形」「禁止形」であること。
日本語も母語も年齢相応の言語力に達していない「ダブルリミテッド」の子どもたちへの支援の現場では、文化の違いによる差異によって日本人に失礼な態度だと誤解されないための礼儀作法を教え込んでいること。
これら日本語学習における様々な取り組みを紹介するルポ内容の中で、支援現場の皆さんがあまりに「日本的ふるまい」を重視しているように思えて戸惑ってしまったのだけど、しかし私が「こんな悪しき“日本での常識”や“ルール”を身につけさせるなんてバカバカしい」などと感じても、それは今この国で実際に生活している「外国人」の助けには何ひとつならないのだということを突きつけられた。
自己責任論が蔓延るこの日本社会では、こうした処世術が言葉通りの意味で身を守る術となる暮らしの現実に対して、知識も実感もぜんぜん足りていなかった。