宮部みゆき『青瓜不動 三島屋変調百物語九之続』
今作はまるまる、富次郎が自らの来し方行く末について思い巡らせる一冊だった。
表題作は虐げられ居場所を失った女性たちが身を寄せ合い助け合って暮らす、江戸時代版DVシェルター!
ただシェルターの庵主となったお奈津が、父親と相容れなかったことを後悔して「父には父の苦しさがあったのだ」と自分を責めるのには、父親の仕打ちをそんなふうに許さなくてもいいのにな……とモヤモヤ。
そんなお奈津だからこそ彼女のもとに不動明王(うりんぼ様)が顕現したのだろうとは思うけども。
四篇目は、里の大人たちの行動に泣けて泣けて……。展開は分かっているのに、こういうのに本当に弱い。
アンソロジーの異形コレクション『ヴァケーション』は、トリの王谷晶さんのお話『声の中の楽園』が好きでした。
踏み躙られ続けてきた者が最後の最後に選択した復讐の形、それが世界をひっくり返すスケールでの滅びが描かれており、すごく良かった!
誰もが見て見ぬふりをし続けた結果の、取り返しのつかなさ。
とはいえ自分はこの視点人物である「見ないよう考えないようにしてきた」男と同じだという強烈な後ろめたさが付きまとった。
罪なき者もいっしょくたに巻き添えとなってしまう酷い顛末なんだけど、こういう物語で救われる気持ちも確実にある。
『戦前のこわい話』は怖い話ではなく実録犯罪“風”譚だったけれど、これがカストリ雑誌ってやつなんでしょうか……?
女を激しく見下しながらも、手前勝手なファンタジー満載の欲望を押し付けてくる超キモい話ばかりで辟易してしまった……