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ハリー・ムリシュ『襲撃』(長山さき訳)読了。

解放間近の第二次世界大戦下のオランダ。
ナチス協力者の警視が殺害された報復で、全く無関係にもかかわらず家族を殺された少年アントンの半生を、その後けっして消えない複雑な葛藤の中で巡らせる善と悪についての思索を静かに見つめる傑作でした。

「襲撃」があった夜に、何が起きていたのか?
起こってしまったことは変えられない、事実は事実であり、自分はそれ以上のことを知りたくはないと考えるアントンが否応なしに過去を見つめざるをえない時、13歳の日に確かに交わした会話や体験への強い感情は記憶の底に沈みすでに遠く、掬い出したくとも伝えるすべがないことが哀しい。

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