KADOKAWAのヘイト本が発売中止になったということなので、送ったコメントを紹介しておきます。
トランスミソジニーと言うとトランス女性に対する言葉なんですけど、実際は特に若いFT系のX、クィア、ノンバイナリに向けられてきたのも剥き出しのミソジニーなんですよね。私も提訴で顔出したときから、なんぼほど言われてきたかわかりません。
いま、日本の「一般社会」ではトランス女性、MT系、AMAB当事者が話題になりがちですが、トランス男性、FT系、AFAB当事者に対する「正当なトランスであるかどうかの疑い」は、当事者コミュニティ内ですら内面化されてきた根の深い話です。MT系当事者が、トランスであること・シス女性と共通の経験を有していないことで複合的なバッシングを受けるように、FT系当事者もまた、女性として生まれたことで「女こども」ゆえの主体性欠如を疑われ、滑らかな肌や乳房、妊孕性を失うことを必要以上に「惜しまれる」のです。そうした構造は、「男らしい」トランス男性が「男らしくない」FT系やノンバイナリ当事者を攻撃する理由にもなります。
(下に続く)
(一連の投稿に追記)
なお、私が「FT系」などの言葉を使うことについて、別のSNSで使用をやめてほしいという意見があり、それについては「仰るようなことも踏まえて、「トランス女性、MT系、AMAB」と並べています。当事者がどのような言葉に馴染み、どのように名乗っているか現実として統一されておらず、他者がそれを言い換えるべきではないと考えているため、私が書くときにはどれかに限定する形はとらず列挙しています。上の投稿では最初だけですが、原稿などではいちいち列挙していますし、講演では、非当事者が(名乗りのわからない)当事者を名指すときは、出生時の性別を介さずトランス男性やトランス女性を使うのが無難だという話もしています。海外論文を検索すると(…)FTM transgenderのような用例があるので、ポルノ以外であまり使用されていない、は少し言い過ぎではないでしょうか。特にフィールド調査や聞き取りを論文化する際は、書き手が本人の名乗りを勝手に曲げてしまうことの方が問題だと思うのですが……。」と応答しました。その方は納得されていないのですが、他者がアイデンティファイのために使っている言葉を不要とする態度を、私はとれません。