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『伯爵と三つの棺』ひょうきんで面白く、自分が築いた物語の土台をないがしろにしないフーダニットだった。18世紀末、中欧の架空の王国。自領の出城で起こった殺人の謎解きに乗り出す若き伯爵、容疑者は城を管理する仲良しの三つ子。伯爵の書記官たる「私」が編集した記録の態なので、「当時の服のミニチュア」写真や登場人物による「※編者注」が出てきて笑った。度量衡の単位や土地の様子も著者独自のもので、少しファンタジーを感じる具合も好きだった。しかもフランス革命という実際の歴史が添えられることで現実からはみ出しきってもいない。この時代この土地なのでこのくらいの捜査能力でやっていきますの宣言通りに犯人を特定できるのも巧みだった。
官能小説を書くために官能小説を読んでいることをまあまあ大っぴらにしている子爵夫人が度胸と知略の人で素敵だし、血筋のみの地位でなく己の才器によって領民に安心される存在になりたいと探偵に乗り出し失敗してその失敗を受け入れられる伯爵もよかった。途中カモシカだったし。
そうしたコミカルさを前面に出しつつ、階級が存在する事で内面化されてしまう差別心を省みるまっとうさがあり、すごく好きな作品にインしました。
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