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『水車小屋のネネ』優しさと実直さと誠実さで社会を包摂的に描くお話だった。2章からほぼ泣いて読んでいた。坦々とした文章で、例えば8歳の子が母親の婚約者から夜に家を追い出されること、外国から労働に来た人が「人間狩り」だと日本人中学生に追い立てられる場面(無事)、友人と栄えた都市に出て洋楽CDを買うこと、牛肉を食べれて喜ぶ若者など、危険なことも幸せなこともすべて日常として一本の道を作っていく。でも狭い道じゃなくて、みんなで広くして、でこぼこをなるべく平らにして、次来る人に残していく道である。生きている限り明日に行かなくていけなくて、そんなこと考えられないよという時でも「前向き」でなければならない時間の、切り離したい痛みを描きながら、絶対にそんな時間を行くひとを孤独にしない。「わたしがそうする」と宣言する物語だった。
蕎麦が食べたい! 血縁による継承も男女の恋愛の出番も極限に少なくしながら、それらを軽んじず、でもそうじゃなくたって大丈夫じゃないかと高らか。藤沢先生の大人として子どもを陰に日向に助ける教師らしさがよかったな。水車小屋に関わる各々の人間とネネとの関係がバリエーション豊かなのもよかったなあ。
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