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『HUNT』 ネタバレ感想 

『HUNT』観た後、あ〜〜〜っという呻きでいっぱいになってしまった。打ちのめされる。民主主義を!と活発化する抗議運動が軍によって「誅滅」させられる軍独裁の80年代を描く。国民への拷問シーンを都度見せ、国の安全保障を掌る機関の次長二人が共に理由は異なれど国家トップの暗殺を企望する物語は、現実の過去への大きな抵抗と皮肉である。
 次長同士の権力争いと見えたものの正体が判明して、お互い相容れないとしても国民を守るために為すべき事は一つと確認し合って、けれどやはり軌道は反れてゆき、二人の正義は潰える。これは二人の正義が暴力の形を取ったからだろうか。でもさあ、どうしたらいいってんだよ。暴力の最たるものを国のトップが行使している状況でさあ。正直、バンコク編でのキム次長の狩りの成就を僕は応援してしまった。でも成就していたら戦争が始まって、本来二人が守りたかった民の命は奪われるし、トップが死んだって首がすげかわるだけで組織は駆動を続けるのだ。ハントの成功も、失敗も、道を開くすべとはならない。途中、パクの娘(娘ではないが)が捕まった時に、有実無実を問わず掛けられた嫌疑を「証明」するしか終わりはないと言われるシーンがあって、その理不尽さと重なった。やるせない。 

『HUNT』 ネタバレ感想2 

 冷徹で利発で有能なので組織の中で活躍できる女性表象キャラクターが二人も出てきましたね。男性表象に割り当てられがちな属性だと思うので(まして話が話だし)。パク側の主任にあの時代・あの組織で女性が就くからにはという暴力行使への躊躇のなさや火のついたドラム缶を蹴り倒すシーンなど、体力的な見せ場があったのも、見せ方としてよかったなと思う。北の赤い服の女性もするっと暴力の現場にいられる胆力のあるキャラでよかった。最後まで捕まらなかったクリーニング屋といいキャラの置き方が巧み。
 一番好きなシーンはラストの車に乗り込むところ。殺す命令を実行できなかった、その上で死にゆく「敵」にトドメを刺しもせずただ傍に行った、そして車外に出たとたんの銃声、と重ねれば彼女の命は尽きているのかもしれないが、「パク・ウンス」には生き延びていてほしいと強く思う。画面に映らなかったのだから生きている可能性はある。あんな暴力が暴力を呼び、しかし暴力では結局解決を導けない社会で、違う道を生きろと望まれた・託された若者。彼女が生き延びることは、今苦しめられている人々すべての生命が、時代の先に進むことだと感じる。

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