シリア方面、アサド政権が倒されたのはいいとして、どうも不穏を通り越して、混乱の極へと向かう形勢である。

 まず、イスラエルが「どさくさ」に紛れてゴラン高原の併合を宣言。米国はと言えば、反アサド勢力の中心、HTSに対する「テロリスト」認定を未解除のまま、油田地域に部隊を展開。それでいて、HTS援助の空爆を行っている。

 確かにHTSは元来「ヌスラ戦線」を名乗っていた「シリアのアルカイダ」である。初期には拘束者・反対者の首を切断などISと同じ事をやっていた。

 他方、今回のアサド打倒に少なからぬ役割を果たしたトルコは自国が「テロリスト」を見做しているクルド勢力をユーフラテス西岸から排除。

 元来国連は2015年アサドと「反体制派」からなる暫定政権をつくってISなど「テロリスト」を排除する方針だった。ところが、現在は国連の枠では「テロリスト」だった「シリアのアルカイダ」が暫定政権の中心に座る情勢である。
 
 すでに代表部開設を発表したEU/英国、タルスースの海軍基地確保を目指すロシア、イスラエル全面支持を表明するトランプ、それにイランを戦争に巻き込みたいネタニヤフと来れば、もはやシリア・レバノンは「21世紀のバルカン」である。21世紀の世界戦争を避けることができるのか、もはや瀬戸際と言えよう。

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そもISなる「モンスター」は米国のイラク侵略戦争が生み出されたもの。米軍はフセイン政権を打倒、フセインを処刑した(これ自体国際法違反)上、占領下で旧政権のバース党とイラク正規軍を扱いに完全に失敗。排除された彼らを中心に「IS」なるモンスターが現れた。

 ここで米国は方針をアサド打倒からIS壊滅に変更。ただし、米軍は空爆のみ、地上ではクルド民主軍とヒズボラーが多大な犠牲を払いながら、ISを一応排除。ところが、ここで勢力を伸ばしたクルド民主グループに対してトルコが敵意を剥き出しにする。すでに越境攻撃を繰り返していたが、今回「どさくさ」に紛れてユーラテス西岸まで押し出してきた。

 独裁者排除を口実にNATOが軍事介入、政権を崩壊させた後は自国の利益だけ確保して、あとは荒れるに任せるパターン、リビアでも行われた。リビアは現在でも国家は崩壊したまま内戦状態にある(トルコ軍常駐)。

 何でも悪いことは「欧米近代」のせいにするトルコ大好き・ハンチントンならぬ「トンチカン」ハラスメント教授は、これを如何にご覧になる?

 実際、中東は21世紀に入ってから米国、NATO、イスラエルによる侵略・内戦によってカオスに陥りつつある。パレスティナ人に対するジェノサイドはその「最終段階」とも見ることができよう。

 

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