実は鈴木道彦さんは加藤周一さん(1919生)の親族にあたり、専門と立場の近さからも二人は晩年に至るまで、よく会っていたようだ。
私は加藤さんとは20-25歳くらいの時、よく合っていたが、鈴木さんとは20歳後半に2回ほど研究会でお会いしただけである。
その時は、まさに好々爺として「孫」に接するという風情だった。実際鈴木さんと私はちょうど40歳差である。
ただ、加藤さんが80歳近い頃(私は30歳)、「この間鈴木道彦と会って食事をしたのだけれど、僕たちの系譜は大江健三郎で途絶えちゃったね。」と二人で同意(?)したとしみじみ話したことがある。
ここで言う、「僕たちの系譜」とは加藤周一、堀田善衛(1918生)、鈴木道彦(1929生)、そして大江健三郎(1935生)である。
これにマラルメの菅野昭正(1930生)、ヴァレリーの清水徹(1931生)、P.ベールの野沢協(1930生)くらいまでが本郷仏文の「黄金時代」だったと言えるのだろう。
現在、戦後直後の輝きも「長い凋落を経て、今最終的に水平線の彼方に沈もうとしている。