おやおや、J.バトラーのENSでの講演がキャンセルになったようだ。
残念ながらユルム(Ulm)の栄光もいよいよ地上線の彼方に沈む時が来たようである。
ユルムとはパリのENSの所在地のことであり、他にパリ郊外のサン・クルー、リヨン、レンヌにもある。
サン・クルーはかのナポレオン・ボナパルトが「ブリュメール18日」のクーデターの際、元老院が置かれていた場所。初日はパリの下院、翌日サン・クルーで「合法的」にクーデターを実行しようとした。結局サン・クルーでは軍を議場に入れたので、「合法」は無効になったけれども。
マルクスの「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」は、クーデターを反復した甥ルイ・ナポレオンを批判したもの。「歴史は繰り返す、一度目は悲劇として二度目はファルスとして」とはこのことを指す。
哲学者としてはベルクソン、サルトル、メルロー=ポンティ、フーコー、デリダ。数学者としてはフーリエ、ガロア、経済学者ピケティ、物理化学者パストゥール、政治家ジョレス、ブルム、ポンピドゥーなど錚々たるOBがいる。
WWII後ENAが創設されるまでは文字通り仏学歴エリートの頂点。ただし、権威主義とも裏腹の関係にある。
サルトルはユルムを卒業後、講演と言えども一度も足を踏み入れなかった。