『政治と美学 ベンヤミンの唯物論的批評』、著者の内村博信さんからご恵投いただきました。
この『政治と美学』、大部になったので、刊行は分冊になるのこと。
内村さんは、すでに『ベンヤミン 危機の思考』を上梓しているので、W.ベンヤミン三部作となり、今や日本のベンヤミン研究の第一人者、と言ってもよいだろう。
ベンヤミンはアドルノより10歳若く、E.ブロッホとともにフランクフルト学派周辺にいた。
本書ではS.ゲオルゲやE.ユンガーの「保守的ロマン主義」・「革命的ロマン主義」をベンヤミンが批判し、それに対しK.クラウスやカンディンスキー、クレーなどの表現し主義を対置したことに注目し、それをベンヤミンの「唯物論的批評」と呼ぶ。
また1933年にパリに亡命したベンヤミンは、そこで展開されている「人民戦線 front populaire」の運動に強い関心を抱く。
本書ではパリでの人民戦線の展開とベンヤミンのボードレール論や第二帝政論を照応させながら議論が展開されていく。
ここではペギーやマルローなどの議論・立場も検討されるが、現在の仏文科で、「人民戦線とマルロー」の研究はあるのだろうか?
ちなみに「人民戦線」はパリでまず展開され、コミンテルンはそれを後追いしたに過ぎない。