かつて蒋介石は日本に軍事留学し、2年間陸軍第13師団に勤務したことがある。
その蒋介石は、日本陸軍の「長所」として、「下士官以下の兵士の団結力が強い」、短所として「高級将校に教養がなく、国際的視野に欠けること」と並んで遍在する軍隊内部での「イジメ」を挙げた。
勿論、軍隊という組織は、構造上「イジメ」を発生させるのであって、中国軍に「イジメ」が全くなかったというのではない。
しかし、中国人の蒋介石から見て、日本陸軍内部での遍在する「イジメ」はやはり「異常」と映ったようだ。
世情では、陸軍と比べて日本海軍は比較的「リベラル」と見られる向きもあるが、それは対米開戦にあたって「消極的な」最高幹部が多かった、という話。
現場では、艦船上では「逃げ場」がないので、陸軍以上に水兵への「イジメ」は凄まじかった、とされる。
それにしても、この蒋介石の観察、戦後の日本社会にもそのまま該当しているのではないか?
大企業の「新人研修」は陸軍の内務班による新兵訓練のノウハウをそのまま移行させたものであるし、下士官兵以下の団結力とその「裏」である「イジメ」の密度、集団同調圧力の強さ、これはすべて戦後の「企業戦士」集団の特徴と言えるのでは?
付け加えると、「高級将校に教養と国際的視野に欠けている」との蒋介石の指摘、現在の政官財のパワー・エリートにそのまま「該当」する、と言えるだろう。
これで一般市民には「グローバリズム・スタンダード」などという呪文をかけて、生活水準を下げ続け、挙句の果ては、米国の掌の上で踊らされて、「アジアからの孤立」に邁進するのであるから、たまらない。
とりわけ軍部以外の官僚機構は、ほぼ無傷で戦前戦後を連続した。内務省の特高の一度解体されたが、公安警察としてすぐに復活。
政治家は岸ー安部、吉田茂ー麻生太郎、近衛文麿ー細川護熙、鳩山一郎ー鳩山由紀夫、である。
財閥は一度解体されたが、占領終了後から、再編・復活をはじめ、60--70年代には、三井・三菱・住友・芙蓉・一勧・三和の六大企業集団となり、2000年代の再再編によって、三菱・住友、それに三井の三つに絞られた。
しかし戦後改革で禁止された純粋持株制度も復活されている。
「鉄は国家なり」の自負に支えられた国策会社、日本製鉄も戦後改革で分割されたが、再統合を繰り返し、近年新日鉄住金から「念願」の「日本製鉄」へと返り咲いたのである。